エクラン・オート・ルート Haute Route des Ecrins


3日目 6月28日 雨のち曇りのち晴れ

セレ小屋 Refuge du Sélé 〜 セレのコル Col du Sélé 〜 ピラット小屋 Refuge de la Pilatte


出発地点と到着地点 標高 所要時間
セレ小屋 Refuge du Sélé 2511m
セレのコル 3283m 3時間35分
ピラット小屋 Refuge de la Pilatte 2577m 2時間30分






夜中何度か強い風と雨の音で目が覚めた。もともと山小屋では良く眠れないのでどうということはないのだが、止まないかな、止んで欲しいと考えているとまた余計に眠れない。そうしているうちに3時55分の目覚ましが鳴った。
4時に朝食を取りに食堂へ降りていき、外を見るとまだ雨は降っている。最新の天気予報では午後から雷雨とのこと。今まで私のエクラン山群晴天率は100%を誇っていたのに・・・。思い切ってしばらく雨が小止みになるのを待つことにする。
今日の行程は、セレ小屋を出発して小屋下に100mほど下り、セレ氷河のモーレーン上に出てから、ほぼ正面のセレのコルを目指す。コルに着いたら尾根伝いにブッフ・ルージュ3516mを登攀し再びコルに戻る。コルからはセレ氷河を挟んで反対側にあるピラット氷河上に降りるまで岩壁下降、ピラット氷河を下りピラット小屋までというものだ。
ここで予定を変更し、しばらく雨脚を見てから出発、ブッフ・ルージュには登攀せずなるべく早い時間にピラット小屋に駆け込むことにした。
幸いにも5時を過ぎたあたりで雨はほとんど止んできた。風はまだ強いが体温を奪うほどの冷たい風ではない。小屋から下へと降りていく道は細いがしっかりした道で、ジグザグに下る。氷河といっても先端では山から運ばれた岩や石によって氷が埋め尽くされたモーレーンで、ガレ場と同様だ。先ほどまで降っていた雨で滑りやすくなっている。モーレーン上をコルに向かって真っ直ぐに雪渓が現れ始めるまで歩いていく。
このころから青空がのぞき始めた。

前日のエールフロワド登攀の時に撮影


いよいよ傾斜が出てくる雪渓の先端に差し掛かったらアンザイレンしてアイゼンを装着。アイゼンやピッケルをザックから下ろすとだいぶ荷が軽くなったように感じる。右手には昨日登攀したエールフロワドの雄姿が鎮座している。
コルまでは直登はせず、中央のまるで魚の鱗のようにクレヴァスとセラックが何段にも重なった地帯を避け、左に迂回し、ブッフ・ルージュの足元を通ってコルに達する。特に中央のクレヴァス地帯の左脇を通過する時は雪上の筋や凹凸を良く見てヒドゥン・クレヴァスに注意する必要がある。途中1箇所雪上に線が横に大きく走っていた。線といってももちろん色が付いていたり盛り上がったりしている訳ではなく、お札の透かしのように真っ白な雪の上に見て取れる線なのである。アンザイレンのロープは4m以上ピンと張り、トップはストックで雪を突き刺しながら進む間、セカンドもサードも確保の体制をとる。トップが渡り終え、セカンドの番になり核心部分を越える時・・・落ちた、胸まで。幸い落ちた穴の片側が氷壁だったため、アイゼンを蹴り入れ這い上がる。こうなるとサードは足に体重をかけてヒドゥン・クレヴァスを打ち抜くのを防ぐためにピッケルを使いほふく前進する。無事通過、私以外は!
ここを越えればあとはコルまでの緩やかな登りが続く。

右手にエールフロワドが見える
中央クレヴァス帯を迂回し右にカーブ
右にコルが見える
振り返ったところ
分かりづらいが結構高度感あり
コルはもうすぐ

コル着8時50分。左側の岩場に20mほど登りここで少し小休止。素晴らしい晴天となり、雲の様子を見るものの午後から天気が崩れるかは判断できなかった。
腰掛けている尾根伝いにはブッフ・ルージュがそびえている。登りたいのはやまやまだが、雷雨のことを考えてやはり断念する。
このコルからは今たどったセレ氷河とそれを取り巻く秀峰が、反対側に目をやるとピラット氷河とそれを生み出している岩壁を持つピークが見渡せる。たかがコルだが、周りの名だたる山々からのパノラマには負けないくらいの絶景が望見できる。

さて、ここからピラット氷河に下り立つまで約60mほど岩壁を下降する。

コルの隣にそびえるセレ峰3556m
尾根はブッフ・ルージュに続く
下降途中、ブッフ・ルージュを見る
下降している他のパーティー

翌日登頂したモン・ジオベルネから撮影


ピラット氷河は1昨年来ているのでルートは良く分かっている。男子は下りながらステップを切って氷上を階段状にしてくれるのは有難いが、なんせ1歩が大股で私の短い足での歩幅では2歩必要だ。ぐずぐずしているとロープで引っ張られるし、実はここの下りが一番難儀したかもしれない。
お気に入りの山というのはよく言われるが、私にとってお気に入りの氷河というのはピラット氷河だ。斜面の起伏が富んでいるから氷河が立体感を持っており、至る所で巨大な氷の造形美を見せてくれる。その大きさに圧倒されてしまう。ついつい前後左右を見渡しながら歩くので、つまずきそうになることもある。

氷河からピラット小屋へ上がるには、岩壁にペンキで描かれた赤い丸が目印だ。この赤丸印からほぼ垂直にワイヤーが張られており、それを伝って壁上に出る。

クレヴァスが荒々しいピラット氷河
氷の塊が落ちている、直径は3m位あるものも
左上、こぼれ落ちそうな氷塊
上のピラット氷河ルート写真の左下、縦に割れているクレヴァスの割れ目一つを下から見上げたところ
氷の山、山、山
ピラット小屋
小屋のテラスからの眺め

空はまったくの青空で、天候が悪化する気配はない。こんなことならブッフ・ルージュに登りたかったとちょっと心残りがした。だがそれは言っても仕方のないことで、せっかくの青空のもと、午後の一時をテラスで目の前の絶景を見ながらビールを飲むのも、それはそれで格別なことなのだ。



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